◆「和食」の効用を再認識する
世界が認めた、新陳代謝に「良い食習慣」があります。それは、一汁三菜とごはん――2013年、ユネスコ世界無形文化遺産に登録された「和食」です。
登録された理由は、
(1)バランスに優れた健康的な食事(エネルギー源と細胞原材料の絶妙な組み合わせ)
(2)天然素材の持ち味を活かす(四季折々の旬のものや鮮度の良い生ものを食べる)
(3)暮らしの行事を楽しむ(正月のおせち料理、節句のちらし寿司、土用の鰻など)
一汁は「具だくさんの味噌汁」。三菜は「魚OR肉」「野菜」「漬物や納豆」。和食は自然を尊ぶ日本人が発明した、健康を作る食習慣と評価されました。
和食には、エネルギー源になる「糖質・脂質」、新しい細胞の原材料になる「アミノ酸・ミネラル」、新しい細胞を作るサポート役になる「ビタミン・ミネラル」、古い細胞や老廃物の排出役になる「酵素・食物繊維」が過不足なく、バランス良く揃っているからです。
その背景には、「世界糖尿病デー:11月14日」(6秒に1人が糖尿病の合併症により死亡)と「G8認知症サミット」(脳の糖尿病とも呼ばれる認知症は先進国共通の課題)の存在があります。糖尿病と認知症を防ぐ和食に対する期待と羨望があります。
近年、欧米では、食に対するパラダイムシフトが起きています。日本でも、栄養学のアインシュタインと称されるコリン・キャンベル博士を招いて、今年10月、講演会「正しい栄養学こそ真の医学と言えるのではないだろうか」が開催されます。
【同博士の日本人へのメッセージ】
●欧米では、正しい栄養の理解がなかったため、生活習慣病の蔓延と医療費の激増を招いた。和食の伝統を持つ日本人は、ひと昔前の食習慣に戻せば、糖尿病やがんなどの罹患率は圧倒的に低下する。
●プラントベースのホールフード(未精製・未加工の植物性食品)から栄養を摂取すれば、将来の予防ばかりか、今の疾患改善もできる。正しい知識と正しい栄養摂取は、生活習慣病という深刻な問題に対する解決策になる。
ところが、日本人の食環境の歴史は次の通りです。
□1958年
インスタントラーメン発売。以降、インスタント、レトルト(加熱・殺菌済みの加工食品)といった便利な食品が普及。
□1964年
アジア初のオリンピック。都市美化計画により、江戸時代から続いた循環型農業(人糞を肥料に使うリサイクルスタイル)が東京で消滅。
□1970年
大阪万博にファミリーレストラン登場。外食産業元年。以降、外食・ファーストフードチェーンが続々と出現。
当時に比べ、現在は、米・味噌の消費は半減し、カロリーベースの食料自給率も半減。高脂肪な食生活による生活習慣病(メタボリックドミノ)が加速的に増加しました。
次回は、対応策についてお伝えします。