◆たった一つの勘違い(1/2)
「病気にならないこと、元氣でいられること、そして最後まで自分の力で身の回りのことができる」のが幸福の基本だと、私は考えています。
そして、「朝スッキリ目覚めて、夜満ち足りた気持ちで眠りにつける」のが日々の幸福であり、そうやってQuolity of Life(人生の質)は積み上げられると、考えています。
ところが、そうはさせてくれないのが心身の不調や病気です。私たちの周りにも、うつ状態で悩んだり、隠れ糖尿病ではないかと心配する人も増えています。そのため、大学病院などの大きな病院では、2時間近く待って診察はわずか数分という事態になっています。
でもこれは、日本の常識は世界の非常識と揶揄される、変わった状況なのです。
経済協力開発機構(OECD、現在35か国加盟)の1998年調査では、医者一人が年間に診察する患者数は、OECD平均2400人に対して日本は8500人と3.5倍。1回受診当たりの医療費は、日本7000円に対して英国2万5000円、フランス3万6000円、米国6万2000円、スウェーデン8万9000円です。現在も大きくは変わっていないと思います。
わが日本では、患者が大勢押しかけるので、医者は一人で1日50人近く診察。さっさと話を聞き、検査に回し、薬を処方する。しかも国が医者の技術料を低く抑えているので、多くさばかないと病院の経営は成り立たない。これでは医者は疲弊するばかりです・・・。
どうして、こんないびつな状態になってしまったのでしょうか? その一番の理由は、私たちが「病気は何でも医者が治してくれるもの」と勘違いしているからだと思います。
病気は「本来の病気」と「その他の病気」に分けられます。そもそも医者の守備範囲は本来の病気であり、その他の病気は医者にとって守備範囲外とも言えます。
上記の図のように、「本来の病気」は医者の力を借りなければ治せないものです。まさに医者の本領が発揮できる領域ですが、現在では病気全体のせいぜい2割です。
振り返れば、高度経済成長にともない、国民皆保険制度が1961年に施行されました。誰もが平等に低料金で受診できるようになり、結核や肺炎などの感染症、乳幼児の疾病、交通事故や工場内での大けがといった本来の病気を克服。それまで先進国で最低だった平均寿命は1980年代には世界No.1になりました。経済と医療のお陰です。
ところがその頃から、ぜいたく病とも呼ばれた「その他の病気」が出現、急増して、今では8割を占めています。これらは全て生活習慣病で、名前の通り、生活習慣が原因の病気なので、生活習慣を改善しない限りは治せません。
言い換えると、「生活習慣を変えることで治せる」、それは自分自身でしか変えられないので、「主治医は自分自身」なのです。しかしそうは言っても、初期段階を超えてしまうと、元の健康な状態には戻せません。
その典型的なケースが、「血糖値がやや高い状態」(=初期段階)を超えてしまって、2型糖尿病や合併症に、過剰な血糖が内臓脂肪に変換されてメタボリックドミノを引き起こし、うつやMCI、認知症になっていくことです。これが、中高年に増えているのです。
ですから、「病気は何でも医者が治してくれるという勘違いを無くす」「生活習慣病のことを知って、初期段階で早く気付き、生活を見直して、治してしまおう」「医者には本来の病気に専念してもらう」というのが、私たちの考えです。それがあるべき姿だと思うのです。
ー次回へー