◆「糖尿病」後進国・日本
糖尿病患者が2016年に1千万人になったと、9月21日厚生労働省が発表しました。前回2012年の調査から50万人増え、初めて1千万の大台に乗り上げたのです。糖尿病予備軍の高血糖を加えると2千万人です。
糖尿病もしくは高血糖は、男性では50代の4人に1人、60代の2人に1人です。女性では50代の8人に1人、60代の4人に1人です。
高血糖そして糖尿病が恐ろしいのは、それが原因でなる合併症(例えば人工透析・失明等)です。
それに近年では、MCI(軽度認知障害)そして認知症を引き起こすことが分かってきました。
国際糖尿病連合(IDF)によると、糖尿病患者は2015年時点で、前年より2830万人増えて、4億1500万人となり、糖尿病が原因で6秒に1人の割合で命を落としているとか。驚きです。
糖尿病の脅威拡大を受け、IDFとWHO(世界保健機関)は1991年に世界糖尿病デーを制定し、2007年には国連で正式決議されました。
興味深いのは、IDFが「糖尿病は豊かな先進国に多い病気というイメージは誤りで、4分の3は低・中所得の国に集中している。とりわけ40歳から59歳の働き盛りの世代で爆発的に増加している」「痛みなどの自覚症状がないことから、糖尿病でありながら対処しない人がほとんどである」と指摘していることです。
またWHOは「不健康な食事、運動不足、喫煙、過度の飲酒が原因であり、これらの生活習慣を変えないかぎり改善はできない」と警鐘を鳴らします。
11月14日、160か国、10億人が参加して、”Unite for Diabetes”(糖尿病と闘うため団結せよ)のキャッチフレーズを掲げ、「まず糖尿病を知ろう」というキャンペーンを行っています。あまり知られていないかもしれませんが、もちろん日本でも。
ここで素朴な疑問があります。なぜ先進国の日本で、糖尿病やその予備軍の高血糖が増え続けているのでしょうか? しかも40代以降に・・・。
それは、次の3つが主な原因です。でも一番の問題は、日本人は「糖尿病を知らない」ということです。これが3つの原因を作っているのです。
(1)内臓脂肪が高血糖を引き寄せる
40代以上になると、食べたものの消化吸収率がガクンと落ちるので、どうしても内臓脂肪が溜まってしまい、別名「内臓脂肪症候群」と呼ばれるメタボリックシンドロームになりやすいのです。この内蔵脂肪が高血糖や高血圧・高脂血を引き寄せます。
内臓脂肪が元凶です。その意味でも「ポッコリお腹」は危険信号なのです。
(2)栄養不足がメタボを加速させる
また40代を過ぎると、栄養吸収率も低下し、20歳ピーク時の半減となります。野菜や豆類だけでなく、肉や魚もしっかり食べないと、栄養不足や低栄養状態になり、細胞の作り替えがうまくできず、やはりメタボリックシンドローム(正式名:代謝異常症候群)になりやすいのです。
「肥満の栄養失調」が増えていることを知っておいてください。そのためにも、内臓脂肪を燃やす筋肉を作るアミノ酸、骨を作るミネラル、老廃物を排出する酵素が特に必要なのです。
(3)糖質過多食を脱皮していない
ところが糖質(炭水化物)だけは例外で、栄養吸収率は落ちません。
子作りや瞬発力のある動きをする年代では、エネルギー源の糖質は不可欠ですが、もうその必要がないのに、今までと同じように丼物、コンビニ弁当、ラーメン&半チャーハン、お蕎麦&おにぎり、パスタ&ケーキセット、握り寿司などの「糖質過多」食では、高血糖になってしまいます。
それに女性は妊娠する可能性が低くなると、食べたものが皮下脂肪よりも内臓脂肪として溜まるようになるのです。それが肥満に繋がります。
血糖値を上げない理想的な食習慣として、日本には「懐石食べ」があります。
最初に野菜料理を食べ、お椀の汁で胃を満たし、そして肉、魚の順でゆったり食べ、最後に白米か麺を少量いただく。その現代版が世界無形文化遺産の『一汁三菜』です。
高血糖や糖尿病、その進行から始まるMCIや認知症を防ぐためには、どんな食習慣をしたらいいか、実は日本人は昔から知っていたのかもしれません。現代人も先人に学ぶ必要が大いにあります。