◆最強のがん対応策(2/3)
半世紀前はがんはそれほど多くなく、死因トップに躍り出たのは1981年です。がん死の多くが65歳以上の高齢者で、当時の寿命は70年と少しでした。
そして寿命の急伸と共にがんも急増したのです。がんが増えた真の原因は「長くなった人生を全うするための戦略」を持っていないことなのです。
この戦略を持つことが、最強のがん対応策となります。
(1)一次予防:セルフケア
がんの発生を防ぐことです。一次予防は病気になったら治す「治療医学」でなく、病気にならないように予め防ぐ「予防医学」の考え方から生まれた言葉です。そして生活習慣病のがんは、食生活・喫煙・運動不足・ストレスの生活習慣を解決すれば8割防げるのです。
(2)二次予防:検診
一次予防で防ぎ切れなかった分を二次的に防ぐのが早期発見・早期治療です。がんが進行しないうちに早く見つけて治してしまう。初期の段階であれば治る場合がほとんどです。痛みなどがないので、症状が出てから病院に行くとほとんどが進行がん。だからこそ定期的に検診を受けるのです。
(3)リスクマネジメント:2段構え
一次予防と二次予防の2段構えでがんで亡くなるのを防ぐのが最善の方法です。ただ初期のがんは見つけにくいので、効果的な検査方法を知る必要があります。例えばPET-CT検査はより正確に位置と大きさが分かるし、痛みもなく全身を調べることができます。でも10万円以上かかります。
次に、残念ながら進行がんが見つかった場合です。厳しくとも、自分でがんのことを調べて、医者も病院もうまく使ってがんに立ち向かいます。
1. がん治療はケースバイケース
進行度ステージ0から2の初期がんは治せても、3から4の進行がんは治療法が限られ治療も難しくなります。年齢や体力によっては、抗がん剤の副作用に耐えられず、逆に命を縮めてしまうケースもあります。進行度や部位、年齢や体力によってケースバイケースで判断する必要があるし、本人の人生観や死生観によっても治療法は変わってきます。
2. がんの三大治療
それぞれメリットとデメリット(副作用や後遺症)があり、一度決めると後戻りできないので、最初の治療を慎重に選びます。
(一) 手術…がんができた臓器を切り取る
最初の治療に日本は手術を選択する傾向が強いですが、欧米は6割以上が放射線治療です。切り取ったら戻せないので、手術をすすめられたら放射線医にセカンドオピニオンをもらうことが大切です。
(二) 放射線治療…放射線を照射してがんを焼く
放射線使用量と回数の制限でがんを全滅させる前に止めてがん細胞を再び盛り返させたり、がん細胞よりも弱い周囲の正常細胞を殺して体を衰弱させるリスクがあります。
でも最新機器はコンピュータ制御でがんを正確に捉えるし、出力の小さい放射線を多方向から照射するのでよく効くようになっています。ただしがんセンターや大きな病院は多くが赤字で最新機器に切り替えられず、逆に都内のクリニックにあったりします。
(三) 抗がん剤…薬を投与してがんを殺す
全身に転移してしまうと手術で切り取ったり、放射線で焼くことができず、抗がん剤を選択する場合が多々あります。でも副作用が強く、全身の正常細胞を攻撃して患者を苦しめます。
抗がん剤は第一次世界大戦で毒ガスを開発した際に偶然発見されたもので、欧米では副作用とは言わず毒性という言葉を使います。
なおがん細胞だけを攻撃しようとする分子標的薬は副作用が小さめですが、費用が高いのが難点です。
3. 保険診療と自費診療は同時に受けられない
20ベッド以上の施設を持つのが病院の定義ですが、原則として病院では保険診療しか受けられません。自費診療(先端治療)の併用はできないのが現行ルールです。このルールのため病院の医者は自費診療にピリピリします。
例えば抗がん剤の副作用を和らげるサプリメントは保険適用外のため病院で処方されず、自分で探して買わなければなりません。また第四の治療法として注目される免疫療法も保険適用外です。がんに対する“免疫力”を強化し、がん細胞だけを殺す画期的な治療法です。でも新しい治療法は多くの臨床試験をパスして健康保険の対象となるので時間がかかります。
がん治療は医者に任せればいい時代から、患者が情報を入手して悔いのない治療を選ぶ時代になっています。実際のところ、進行がんは治療は難しく、保険対象外の最先端治療はお金もかかるしやってみても思った効果が得られないかもしれません。でも希望を持って最善の手を尽くすしかないのです。
しかし、発想を変えれば、がんは怖くはありません。一次予防で8割防げるし、さらに検診で早く見つければ治せます。世界的に治療医学から予防医学へシフトしているように、私たちも予防の知識を身に付けて「がんにならない」「がんで死なない」ようにすることが何よりも先進的なのです。
次回は、一次予防のポイントについて。