■求められる能力が大きく変わる

2020年から大学入試制度が大きく変わります。未来を見据えて、教育の大改革が始まるのですが、既にそれを先取りしたような入試問題を出した大学もあります。

例えば、「宇宙人に、地球が国単位で暮らす理由を説明せよ」という小論文です。答えることができますか? 国とは何かという定義を知っていて、そのうえで人間の集団性や社会性についての本質を考える力がなければ答えられないでしょう。

他には、「もし、地球が東から西に自転していたとしたら、世界は現状とどのように異なっていたと考えられるか、いくつかの観点から考察せよ」という入試問題も。西から東へという自転の“定義”をひっくり返した設問です。

このように、学校の授業で習った知識をそのまま再現するだけでは対応できないような問題が、2020年の大学入試から出題されるようになるのです。

それは中学校にも波及し、「ドラえもんが生物と言えないのはなぜか?」という入試問題が出されました。一つの解答例は、「生物の前提は子孫を残せることなので生殖機能のないドラえもんは生物とは言えない」、というものです。単純に、「ロボットだから」では不十分なのです。

大学入試制度が変わる背景にあるのは、「教育そのものの変革」の必要性です。

設問の□を埋めてみてください。どうですか? 設問(1)「107」、設問(2)「18」です。

人生100年に向かうだけでなく、22世紀に届くのですから驚きです。「百歳時代なんて未来の話でしょ」とのん気なことは言ってられません。この現実に真っ向から向き合っていかなければ、子供世代の足を引っ張る存在になってしまいます。

人生100年を視野に入れると、私たちの上の世代が築いてきた「20年学ぶ、40年働く、20年の老後」という人生80年モデルはもはや時代遅れの産物です。

これからどんな社会になっていくのでしょうか? AI(人工知能)がどんどん進化して、社会のあらゆる分野に進出していることは間違いありません。現在ある職業の相当数がAIに取って代わられる、とも言われています。

グローバル化もますます進み、国籍や民族、宗教や慣習などバックボーンが異なる人たちが、多様性を認め合い、それぞれの強みを主体的に生かしながら、協働・連携・競争していく社会になっているでしょう。働く場は国外も当たり前です。

国内では少子化による現役減少、高齢者の高齢化による長生きリスク、社会保障費の膨張、国の借金、国防の危機、地震や災害の対策など、現在山積している問題が深刻化していきます。どれも正解がないか、正解が一つではない問題です。

求められるのは、社会がどう変わろうと生き抜ける資質・能力です。そのためにも、人間だからこそ持ち得る「思考力・判断力・表現力」と「主体性・多様性・協働性」を学ばなければなりません。それがあっての楽観と自信が社会を明るくします。

こういった時代背景や問題意識を持って、教育の大改革が始まります。

「学力」が再定義され、「学力が高い」という意味にパラダイムシフトが起こります。

従来の「第一の学力」(より多く覚えてより早く解く、より多くの技能を体得する)に、「第二の学力」と「第三の学力」を加え、三つ揃った人が「学力が高い人」です。

第二の学力=正解がないか正解が一つではない問題を解決する思考力・判断力、それを言葉や文章にする表現力、見出した最適解を正解にしていく自信と勇気
第三の学力=自分のやりたいことで社会の役に立つ主体性、他者を受容する多様性、共感しながら成果を挙げる協働性

では私たち大人世代はどうすればいいのか? 子供たちに先行して、三つの学力を学び直すことです。知識・スキルの刷新。自立自尊力の蘇生。受容力と共感力を磨く。人生シナリオの描き方、自分の人生は自分で決めることを新たに学びます。

私たち大人世代には、学び直しで自ら変革し、子供世代のコーチ役やメンター役になる責務があります。それを生業とする私たち同世代の教師は尚更です。

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