■コロナ前の「歴史」を知る(2/4)
前回、団塊世代が「居場所のない定年後」(自分の居場所、社会との絆、生きがい、経済、健康を失っていく状態)に陥っていることを採り上げましたが、現50代が同じ道を辿らないためにも、この世代が50代になった頃の時代状況を振り返ってみましょう。
時期的には1990年代後半、バブル崩壊から数年経っています。そして60歳定年が施行されたのが1998年(平成10年)です。55歳から5年先に引き上げられ、50代を迎えようとする団塊世代を大量に抱える大手企業では、人件費の負担増と後進のポスト不足が起きました。
そこで55歳以降の賃金大幅カットとポスト不足解消のために考えられたのが、“役職定年” という制度です。でも、お尻に “定年” という文字が付いているように、ホンネは定年です。
この時期に、「新卒一括採用、年功序列、終身雇用、定年制」の日本型雇用慣行は実質的には崩れたのですが、そのまま慣例として存続させ、従業員に対する企業の役割は「定年まで雇用する」を何とか維持していました。しかし、“定年消滅時代” が到来していたのです。
時代の兆候を掴み、定年という過去の制度に囚われずに、もっと長く働ける方法を考えれば良かったのです。本来、戦後生まれで現代っ子の団塊世代は、「Live longer, Work longer」(より長く生き、より長く働く」時代のフロントランナーなのに、時代を掴めませんでした。
その後、時代の兆候は顕在化していきます。例えば2017年経済産業省が、従業員に対する企業の役割は「社会で長く活躍できるよう支援する」ことであると表明しています。
―― 次回に続く ――