■三大不安と向き合う(その2)
今回は、三大不安の「健康」についてですが、この健康問題はとてもじゃないが一筋縄ではいきません。というのも、人生が圧倒的に長くなり、健康に対する今までの常識がまるで通用しなくなっているからです。
「人間50年、下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり」――と信長が出陣の前に舞った乱世の時代から400年間ずっと、人生50年でしたが、1947年に男女共50歳を超えてから、寿命の急上昇が始まり、あっという間に人生100年時代を迎えることに。
そのため、「脳と体の耐用年数」(いわゆる「健康寿命」のことです)は、急速に伸びた寿命に追い付けず、75歳を超えると、「3人に1人が “MCI/認知症”」、「2人に1人が “がん”」になっているのが悲しい現実です。
とりわけ怖いのは “認知症” ですが、人生60年や70年の時代では、発症するまでに亡くなっていました。そのため、認知症は別名 “長生き病” と呼ばれています。
認知症やがん、糖尿病の合併症(人工透析・失明・えそ)は、いずれも「生活習慣病」ですが、名前が示すように、「生活全般(食・思考・行動)にわたる習慣の何かが間違っていることが原因で起こる病気」です。しかも10年や20年の潜伏期間を経て突然発症します。
つまり生活習慣病になったというのは、言わば自分の生き方に「ノー!」を突き付けられたということです。でも同時に、「生活習慣を変えれるのは、医者でも薬でもない。変えられるのは自分だけ。自分の生活習慣の何が問題なのかを掴んで、自ら対処すれば良い」という、この病気の解決方法を教えてくれています。
認知症やがん、糖尿病の合併症など、長年かけてなった生活習慣病(「慢性疾患」とも言います)は、先進医学でもそう簡単に治せない病気ですが、その中でも治せない病気の代表が、あまりに増えたため2005年に痴呆症から改名された認知症という存在。でも幸いにも、最新の総合科学が次の3つのことを突き止めています。
この内容をNHKが、「NHKスペシャル:“血糖値スパイク” が危ない」「シリーズ医療革命:あなたを襲う “血糖値スパイク”」で放映し、そして著書「糖尿病、認知症、がんを引き起こす血糖値スパイクから身を守れ!」を発行して警鐘を鳴らします。
(1)血糖値スパイクの繰り返し
血糖値スパイクの繰り返しが、血管を傷つけ、脳や体の細胞を壊し、認知症を発症させる。
(2)社会環境への不適応
他者とのコミュニケーションや社会環境に適応するのに必要な認知機能が衰え、無関心・現実逃避の心理症状や、受け入れ拒否の行動症状を起こし、自ら認知症を引き寄せる。
(3)始まりは40代・50代から
40代や50代から芽が出て、20年以上の潜伏期間を経て、75歳以降に発症するケースが多い。
認知症になりたくないのなら、早いうちに、自分の食習慣・思考習慣・行動習慣といった生活全般を見つめ直し、間違ったところを正していくしか方法はありません。
上記3つのことを知って、特に驚かされたのが “血糖値スパイク” という存在です。
この “血糖値スパイク” は一見 血糖値とは無関係に思える “認知症” や “がん” を引き起こします。その結果が、3人に1人、2人に1人がなっているという現実です。
人間ドックや健診では、血糖値は「空腹時」にチェックしますが、「食後」ではチェックしません。そのため肝心の “食後の血糖値上昇・下降” (血糖値がスパイクシューズの針のように上昇・降下するので「血糖値スパイク」と言います)の数値は分からず、ここに落とし穴があったのです。
でも、認知症が別名「脳の糖尿病」と呼ばれるようになったり、がん細胞は糖しか食べないことを知ると、血糖値と認知症・がんの関係の深さが理解できます。
そして問題なのは、 “血糖値スパイク” は、性別や年齢に関係なく、誰もが起こしてしまう習慣だということです。品種改良や企業努力によって、ご飯や麺は格段に美味しくなり、美味しくなった分だけ、糖質の含有量が圧倒的に増えているからです。
私もこれらの数字を知ったときは、「えっ!これじゃあ誰もが血糖値スパイクを起こしてしまう」と絶句しました。3度の食事をキッチリ食べて、健康に良いからと野菜ジュースを何箱も飲んで、血糖値スパイクを繰り返していたとは、何ともやるせない!
さらに「思考習慣」と「行動習慣」を見直し、人生100年時代に通用する『新しい健康戦略』を身に付けていくことが、私たち現代人の課題です。そうしないと、わが人生丸は長期航海の途中で座礁したり、沈没してしまいます。
如何でしょうか。次回は、三大不安の3つ目、「人間関係」について。