■平成から「次の時代」を見る(4)
平成3年(1991年)からバブル崩壊が始まりましたが、当時、団塊世代は40代後半でした。50歳を目前にして、下のコップの図がどう見えたでしょうか。
平成の初めは、人生70年とか80年と言われていた頃です。そのため50歳は、「もう先が見えてきた」とか「もう再出発できない」というイメージだったかもしれません。
そのため、バブル崩壊の危機にも、IT革命やグローバル化の世界的変化に対しても、根本から対応するのではなく、局所的で、その場限りの対応になりました。
ヒヤヒヤしながら、60歳定年までの年数を指折り数え、「何とか勤め上げることができれば」という感じだったのでは…とも思います。そうこうしながらも団塊世代の多くは逃げ切り、そのため “幸運な世代” と言われています。
でも、これから50歳を迎える人はそうはいきません。逃げ切れないどころか、「逃げると、時代に追われ、ますます追い詰められる」ことになってしまいます。
そして、団塊世代に反して、“不運な世代 ”と言われる「就職氷河期世代」の先頭(1970年生まれ、1993年の大学卒業・就職)が、50歳を迎えようとしています。
大変な就職活動を強いられ、働き始めてからも、日本経済はずっと、「右肩下がり」か「停滞状態」。一所懸命働いても、思うように収入もポストも上がりません。
でも、「人間万事塞翁が馬」「禍福は糾える縄の如し」―― 幸運が不運に、不運が幸運にいつ転じるか分からない。つまり、団塊世代が “不運な世代” に、就職氷河期世代が “幸運な世代” に転じる可能性が待ち受けているのです。
そこで、もう一度、下のコップを見てください。
時代が大きく変わり始めています。とりわけ個々人の人生にとって、最大の変化は、「100歳まで生きることが当たり前となる時代」を迎えようとしていることです。
100歳時代という『時代観』を持てば、コップ=『人生の総量』が大きく見える。50歳は、中間地点という位置づけになる。そうすると人は、2種類のタイプに分かれます。
●「あと50年も人生を楽しめる」とポジティブ(楽観的)に思う人。
▼「まだ50年も生きなければならない」とネガティブ(悲観的)に思う人。
ーー 最近、不透明感や閉塞感、将来不安という言葉をよく耳にします。そして団塊世代の間で、“長生きリスク” という言葉が話題になっています。
どうやら日本人は、ネガティブ思考の人が多いようです。でも、そうであるからこそ、ポジティブ思考の人が、これから存在感を高めていくと思うのです。
個々人の人生にとって、生きる期間という根底の条件(ルール)が変わる。そうなると必然的に、これまでの働き方・生き方が通用しなくなっていきます。
長生きリスクも含め、様々なリスクが新たに出現します。それらを事前に掴んで、意識も行動も、ポジティブに柔軟に対応していく重要性が増しているからです。そのためにも、「こだわらない」「潔く捨てる」という能力を持つ時代になっているのです。
令和時代では、「50歳」という年齢は、誰もが同じスタート地点に立って、後半戦を始めるスターティングポイントとなります。「新しい働き方・生き方を選び直して、もう一度、新社会人を楽しめることができるか」を、誰もが試されるのです。
そして、ここで注意すべきは、ポジティブ(楽観的)の本質を取り違えないことです。
ーー次回にーー