■50歳は見つめ直し適齢期 (1/3)
私たちを取り巻く環境が大きく変わり、定年後の「常識」が変わってきました。
役員として華々しく活躍していた人が、退職後は何をしていいのか分からず途方に暮れてしまう人がいます。その逆に、不遇な地位に甘んじていたと思われていた人が、定年後に好きなことを始めて輝いている人がいます。
従来の常識からすれば考えられないようなことが、あちらこちらで起き、「定年後に輝く人」と「定年後に萎んでしまう人」の二極化が進んでいます。
定年の年齢が55歳から60歳に移行したのは1998年、ほんの20年前のことです。この60歳定年の先頭集団が、これから80歳を迎える戦中世代の人たちです。
60歳定年、それなりの退職金、60歳からの年金受給と制度的にも恵まれました。
この世代のサラリーマンや公務員の定年後は、
〇現役時代に行けなかった妻との旅行や新たな趣味にチャレンジしよう。
〇退職金で自宅のローンを完済し、子供や孫に資産を残す段取りをしよう。
男性が一家の大黒柱となり、定年まで勤め上げ、穏やかな20年近くの隠居生活を楽しむというのが、常識的な姿でした。
その後に続くのが、これから70歳を迎える団塊世代です。最後の逃げきり世代とも言われるように、まだ上記のような常識が生きていました。それに戦後生まれです。
定年後は子供に家を譲り、買い取った近郊の田舎の古民家をリフォームして移り住んで、休耕地を借りて野菜作りを始めるといったセカンドライフも可能でした。
でも団塊世代は、セカンドライフの期間がこれほど長くなるとは考えませんでした。経済的に余裕があっても、安らぐ居場所もなく、時間を持て余し、生きる意義を見失って、MCI(軽度認知障害)やロコモ(準寝たきり状態)になる人が増えています。
寿命はますます伸びています。現在の50代は、60歳で定年を迎えても、30年以上の人生が待ち受けています。それに連れて、年金受給も70歳そして75歳へと引き上げられることが見込まれます。
定年後の常識が本格的に変わるのはこれからです。これまでの常識や上の世代にならって、退職後の人生設計、老後の資金計画を考えていたらとんでもない事態を招きかねません。
そうならないためには、50歳になったら自分を見つめ直し、人生を生き抜く三種の神器「健康力・交流力・経済力」をどれだけ持っているか検証することが不可欠です。
必須3Kのうち、今回は「交流力」を考えます。
定年になって失うものは色々ありますが、定年退職者の多くが「人間関係と情報が激減して愕然とした」と言います。役員出身者であっても「今まで培ってきた人脈が跡形もなく消えた」と言います。
そこで50歳になったら、知り合いの中から、友人を見出しておくことをお勧めします。言いたいことを言い合えるし優先的に時間を作ってくれる、何かあった時に心底応援してくれるのが友人です。
これから、そんな友人と関係を深めることで、人生シナリオが描けたり、また思わぬような展開が開けることだってあります。
そして最も重要なのが、パートナーとの関係を見つめることです。
下の図をご覧ください。収入がなくなったり、激減すると、パートナーとの溝が表面化するケースが多くあります。
照れくさいかもしれませんが、一度じっくり腹を割って話し合って、人生観や価値観、お互いの相性を検証してみます。必ずしも同じ価値観を持つ必要はありませんが、ある程度の割合で共通面がないと、人生のパートナーとしてこれからの長い道のりを共に歩むことはできません。
右側のケースのように、重なり合う面と重ならない面を適度に持って、お互いに気分良く生活していくことが何より大切です。
自分と向き合う、パートナーと向き合うことは何だか怖い気もしますが、向き合ってみて初めて、これまで知らなかったことや胸の内が見えてきます。そして人生シナリオの構想が浮かんだり、パートナーとの新しい関係の第一歩が踏み出せます。
50歳になったら是非、実行してみてください。
次回は「経済力」についてです。