●上司と部下、上司の悩みはつきない
先週は「職場の人間関係」的な研修が多かったのですが、参加者の皆さんの悩みは、環境や時代が変わっても同じなんだなとあらためて感じました。
ちょっとした思い込みや、気持ちのすれ違い、モノの言い方。後から思うと「何故?」と思うようなことで、職場の人間関係は崩れていきます。
今回、特に多かったのは上司と部下の関係。こじれが複雑になっている例も随分ありました。
同じ組織で働く仲間なのに、協力し合って成果を上げていくチームのはずなのに、何故かお互いを評価する目が厳しいのです。
部下が上司を見る時は、自分の仕事に自信があればあるほど、厳しくなるようです。「何故自分はこんなに頑張っているのに、上司は無能なんだろう?」のような身も蓋もない意見も出ます。
上司が部下を見る時は、「何故自分はこんなに頑張っているのに、その自分の言うことを聞かないんだろう?自分はダメな上司なのか」といった苦悩が感じられる意見が出ます。
でもこれは今に始まったことではなく、私が研修業界に入った30年前からの繰り返しの悩みです。
ただこの頃は、上司のほうが悩みが深いように思います。昔のように「うちの部下はみんなどうしようもない。全員首にしたい」といった、暴れたくなるような無謀な発言は聞きません。
上司は組織に入って、その中でずっと生きてきたから、意外に外の世界を知りません。そのせいか、情報もネットワークも、勢いも持っている部下が怖いのかもしれません。
それに環境や時代の変わりようが大きいので、今までの常識が通用しないのではないかと増々不安になってくるのです。そうなると上司は自分を惨めな存在へと追いこんでしまいます。
私はそんなリスクを抱えている上司の皆さんに「自分を開示して下さい」と言いたいです。部下より優れているとか下だとか考えるのは止めましょう。部下のことをよく観察してみましょう。
上司の皆さんは、少なくとも先に生まれて、仕事の経験も豊富なのですから、自分の体験を「転ばぬ先の杖」として、部下に伝えて下さい。とりわけ失敗の経験を語ることで部下との間に化学変化が生まれます。
こんな不透明で難しい時代にあって、一人で頑張るのはこれこそが無謀です。上司だ部下だではなく、成果を目指すチームの一員として、協力して欲しいし、それが出来ると思うのです。
そして部下を活かすも殺すも自分次第と自覚し、部下と対峙して、育てる意識を持って欲しいと思うのです。