●思いは伝わらないのが普通
研修を通して、様々な悩みや疑問に答えていますが、職場での人間関係がうまくいかないという悩みがダントツに多いです。
仕事をする時に、人間関係を良くすることが本当に必要なのか、否なのかの議論は後に回すとして、人間関係がうまくいかないことの原因は 、やはりコミュニケーションの阻害によるものが多いと思っている人が大半です。
他人の心の中は分かりません。また、こちらにも長年培った信条があり、そこから生まれる思い込みもあります。キャリアを積めば積むほど、頑固にもなってきます。他者とコミュニケーションを取ろうとも思わなくなっている人も多いです。
「こういう行動をする人は、今までの経験だときっと嫌な人だ」とか、「この人の言っていることは分からないでもないが、私の信条は曲げられない」とか、「この人とはきっと、良い人間関係は作れないから適当な距離を置いておこう」とか。
様々な形で、私たちのスムーズなコミュニケーションにブレーキを掛けます。
でも私は思うのです。コミュニケーションは元々不完全なものなのです。たとえ良い人間関係が出来たとしても、スムーズなコミュニケーションが出来るとは限らないのです。「話せば分かる」という状態は、特定の環境が整った中にあって、存在するものなのです。
勿論組織で、一緒に働くならば、正確な相互理解は必要不可欠なことです。けれど、それに囚われ過ぎるのは決して生産性のあるものや良きものを生みません。
良き仕事、そしてそれを産み出すチームワークは、良い人間関係から生まれるのではなく、目標達成のために一所懸命仕事をする、各自が自分の役割りを全うすることで、出来てくるのです。
人間関係に拘らず、囚われず、まずは自分の仕事を思い切りすることが大切だと思うのです。
上司の要求に理不尽さを感じたり、人間関係の厄介さを煩わしく思ったりすることも多々ありますが、それでも自分の役割を全うしようと進んでいくことで、知らず知らずのうちに、チームの仲間から評価される自分が出来上がっているものなのです。
眼の前の仕事に没頭することで、人と組織をより深く知り、適度な距離をもって、組織や仕事と関われるようになります。
そして自分の役割や価値観の転換を余儀なくされる時も、その環境の中で、自分や組織にとって、望ましい行動が出来る力を、持てるようになると思うのです。