風間杜夫
風間杜夫が13年間続けている「ひとり芝居」が今年で最後と聞きましたので、慌てて申し込み、家人と出掛けました。11月10日の楽日です。
1997年から始められた芝居は全部で5作。それを今回は一挙上演ということで、トータル5時間の長さでした。途中に15分の休憩を2回挟むだけの舞台は、演じる役者も勿論大変ですが、観客にも体力が要ります。大丈夫かと半分心配、半分楽しみに下北沢の本多劇場に出掛けました。
劇場は補助イスが出るほどの大盛況振りで、風間杜夫が昭和24年生まれということもあってか、団塊世代ぐらいの年代が目立ちました。「団塊の世代を代表して万感の想いを込めて演じます!歌います!ハジケます!」、そして「衰えを知らない精神と体力と演技力を駆使して、演劇界の金字塔に挑む!」というのがキャッチコピーです。
ストーリーがとても面白いです。
第一幕「カラオケマン」:牛山明の人生。ごく平均的なサラリーマンで悩みも抱えている。仕事・家庭・異性問題。そんな彼をいつも救ってくれるのがカラオケ、歌って歌いまくる牛山明・・・。
第二幕:ある日サウナに行って何故か記憶を失ってしまう。交番に行くも病院に行くも蘇るのは青春時代の断片的な記憶だけ・・・。
第三幕:家族も仕事も何一つ思い出せないまま、大衆演劇一座に入る。三つのセリフも満足に言えないが、子供の頃に好きだったことを頼りにオジサンは頑張るのだった・・・。
第四幕:気が付くと一座の女将さんと逃亡していた。座長の暴力から守るためだ。行く宛ても無い珍道中が始まる。やがて女将さんは牛山に恋心を抱き・・・。
第五幕:女将さんと別れた後、交通事故に遭い、ブルーシートの中に居た。ホームレスのオジちゃんとの交流の中で、徐々に記憶を取り戻し、家族の元に帰る決心をするが・・・。
エネルギッシュに演じられた芝居は「演技者はひとり」にも関わらず、沢山の登場人物が舞台に存在するように感じました。勿論、俳優の力量、演出の腕もありますが、観客一人ひとりの想像力も必要だと久し振りの一人芝居を見て感じました。
子役、つかこうへい事務所での「蒲田行進曲」などを経て、最近ではNHK「ゲゲゲの女房」で洒脱な父親役を演じるなど、様々な場面で活躍している風間杜夫の舞台に笑いと感傷をたっぷりもらった5時間でした。