コメント
ネット上では様々な匿名コメントが飛び交っています。当事者と違って冷静な第三者のコメントは、受けた人間に成長や改善をもたらしてくれます。研修でも他者(他の講師も含めて)からのコメントによって本人の気づきを促進させることもあります。
しかしです、他者のコメントに頼り過ぎるのは自分の考える力を弱めることにもなります。また匿名のコメントをし過ぎると、相手のことを思いやる心や情というウエットな感性を損なうことにもなります。様々な事情や背景を排除して、現れている現実に的確にコメントすることは悪いことではありませんが、表面に出ていないことを想像して感じることが大事だと私は思っています。
特に相手の心情を考えることも必要だと思えるのです。ネット上の様々なコメントを読むと、「こういう見方もあるんだ」と驚かされることがあります。「ここまで言うか?!」と嘆きたくなることもあります。しかしコメント力はあった方が良い能力です。出来れば対面して言い合う機会を作り、その中でコメント力を育てて欲しいです。互いに誰が言ったのか、どう言ったのかが分らないとそのコメントを受け止めて成長することは出来ないと思うのです。
ところで匿名性ではなく、「私がこう言った」というケースですが、表面に出ていないことを想像して感じることが大事だと思い知らされた経験があります。私が30代前半の頃、「派遣社員の多くが、自分のキャリアプランをこのように考えています」とある企業でコメントしたことが、大型受注に繋がりました。私はその頃、大手派遣会社の子会社にいましたので、コメントに信憑性があるとその企業の担当者は感じて下さったのです。
しかし実際は真逆の現実がありました。私のコメントは表層を軽く捉えた、自分に都合の良い現実のみを切り取った事実に対する意見だったのです。派遣社員の多くは、派遣先の大手企業では自分のキャリアプランをそのように考えていたのは事実です。でも心の奥底では、「小さな会社でもいいから正社員になりたい」という願望があったのです。
その後、何かしら気になることがあったので派遣社員の方達にインタビューして彼女達の深層心理を知ることが出来、その旨を受注先にお伝えしました。受注した仕事で齟齬や間違いは生じませんでしたが、コメントすることの難しさを未だに痛感させる出来ごとでした。ところで、派遣会社の責任者にも同じ内容を伝えたところ、とても驚かれたのが印象的でした。
話は戻りますが、ネット時代になり、人に、世間に対してコメントが自由に言える今は良い時代だと思いますが、それ故にコメントの難しさも感じます。出来れば相手のためにプラスの影響が出るようなコメントをしたいものです。