●自分で考えることの難しさ
研修では、様々なスキルや考え方を習得してもらいます。直ぐにすべて習得するのは至難の業ですが、基本のところは何とか理解してもらおうと講師も必死です。
参加者も真面目に聞き、習得しようとしてくれます。覚えることは日本人は得意なんだと、この30数年ずっと感じています。
けれども、時代は大きく変わってきています。ますます不透明化し、多様化しています。
今は、「VUCA 」の時代とも言われます。ご存じの方も、聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、変動性( Volatility ) / 不確実性( Uncertainty ) / 複雑性( Complexity ) / 曖昧性(Ambiguity) の略語です。
現在の世界を描写する概念で、ここ数年、社会経済環境をこの言葉で表現することが多くなっています(元々は1990 年代後半に米国の軍事用語として生まれたものです)。
そんな時代に、私たちは何を求められているのか・・・。人材研修業界の片隅にいる者として考えさせられます。
当たり前と思っていたことが当たり前ではなくなる時代、時代がシフトチェンジしているその過渡期において、どんな人材が必要とされるのでしょうか?
少し前までは、与えられた環境を理解し、工夫し、自立的に行動できる人間が優秀だと言われていました。
でもです。前提がまるで変わってしまうような状況では、かつての優秀なタイプは右往左往してしまうのです。「自在に発想する」とか「ゼロベースで考える」ことが求められるのですが、優秀だった人ほど思考停止に陥ってしまうのです。
与えられた命題があったり、想定内の事であれば的確に対応出来るのですが、想定外の様々な出来事を自分事として捉えたり、リアリティ―を持ってその先の姿を想像するというのは、とてつもなく難しいのです。
誰かに頼ることなく、まず自分で考える。不都合な事態にも正面から向き合い、頭を空っぽにして考える。これは慣れていないとすぐには出来ません。人が言っていることを鵜呑みにしていたらいけないし・・・。
自分で真に考える習慣、自分事として捉える習慣。これを研修で具現化したいと悩む今日この頃です。