●任されること
「お前に任せる。好きに、存分にやってみなさい」――これは営業のマネージャーになった時、上司から投げかけられた言葉です。なんだかすごくやる気になったのを、今でも鮮明に覚えています。
自分からアイデアを色々出して、自分の思う通りにしていました。任せられたのだから、成果を出して、自分の力を上司や周囲に見せつけたいとも思いました。
上司に相談をすることもありましたし、周囲の意見に耳も傾けました。やるべきことを理解し、成果も出していました。順調に事が進んでいると思った矢先に、上司から叱責を受けました。自分としては寝耳に水の出来事でした。
叱責は、「任せると言ったが、報告不要とは言っていない。報告こそが任せられた者が担うべき一番の義務だ」。「いや、義務というよりも責任だ。そして任せた者への感謝だ」と。
大きな組織ではないのだから、私の動きを見ていれば、やっていることは分かるだろうという不満が私には残りました。結局任せてもらっていないのだと思いました。
でもです。しばらくして、それは大きな間違いだと分かりました。任されたことをいちいち上司に相談することは必要ないですが、「報告をしない」というのは、「イコール任されたことを何もしていない」ということなのです。
報告がなければ、上司としては、任せたことの結果判定もできませんし、次の一手にも進めません。
任せられることは、「チームの一員として、組織の一員として成長する」ために存在することなのです。そして、報告とセットで初めて成立するモノなのです。
報告することで、自分の行動を振り返ったり、考えをまとめることができます。気付きや発見もあります。つまり、任された仕事の視野を拡げたり、新たな視点を加えたり、深堀りをすることできるのです。35歳の時に初めて理解しました。
それでも、今でも、このことを時々忘れる自分がいます。難しい問題です。任されることも、そして任すことも。