■三大不安と向き合う(その1)

人生100年時代を実感できていないのか、自分が80代になった時の世の中とわが身の姿を想像できないのか、「65歳まで働いて、それからリタイア生活に。平均寿命(男性81歳/女性87歳)まで楽しく過ごせたらいいな」と考えている人が、50代や40代後半(昭和30年代後半・40年代前半生まれ)の中に多くいます。

これらミドル世代は、まだ新人に近かった頃にバブル景気を経験し、「24時間戦えますか」というエナジードリンクのCMよろしく、イケイケドンドンでやれた名残りがあるのか、のん気というか危機感の薄い人が多いようです。

「人生長期化」「AI化」「グローバル化」の潮流がスピードを増し、今のあなたが想像しているものとはかけ離れた世の中に向かっています。このような変化の中を、これから40年以上生き抜いていかなければいけない。

とりわけ、「長く生きる」という本来であれば喜ばしい理由によって、75歳を超えて、「まさか、こんなはずではなかった!」と後悔する危険性が高い。そのため、男性95歳/女性100歳まで生きるという前提で、「お金」「健康」「人間関係」の三つをゼロベースで見直し、学び直していかなければなりません。

例えば75歳以降に、「お金が足りなくなる」「ボケたり寝こんだりする」「孤立してしまう」といった事態に陥れば、人生自体が辛いものになってしまいます。命は長らえるのに、お金も、健康も、人間関係も底をついたというのでは、あまりにも無残です。

そのようにならないためには、これからの時代に通用する最新の知識やモノサシ、価値観や人生観を学び、今のうちから三大不安の芽を摘んでいく必要があります。

でも三大不安のうち、「お金」についてはことさら深刻に考える必要はありません。ビジネスパーソンや公務員は自営業者と違って、厚生年金が死ぬまで支給されるし、勤め先によっては退職金や企業年金だってあります。

この公的年金制度は、支給開始年齢が引き上げられるとか、経済にスライドして少し減ることはあっても、破綻することはあり得ません。

 今のミドル世代までは65歳から支給されるとは思いますが、「95年人生/支給期間20年/支給開始は75歳から」に移行していくと予測される近未来の年金制度。ミドル世代もこれを先取りして動くのが賢明! 75歳まで働くことをお勧めします)

ともあれ、お金に関しては、65歳超えて、「子供の教育費がまだまだ掛かる」「住宅ローンが長く残っている」「家賃が掛かるがその分の貯えがない」「親や子供に金銭的に支援せざるを得ない」「金融機関の話に乗って投資に走る」「大病をして保険外治療をする」「夫(妻)の介護に保険外費用が掛かる」など、特段のことがない限り、心配することはありません。

でも更に突っ込んで、お金にまつわる不安をきれいに解消したいのであれば、75歳まで働くことを意識し、今から65歳以降の「収入」と「支出」をイメージすることです。この作業はそれほど難しくはなく、家庭を家族株式会社になぞらえて、資産と負債のリスト、月次の収支を作ってみればいいのです。

1.収入 

ポイントは、年金を貰いながら、できるだけ長く、せめて75歳までは働くことです。公的年金は「ねんきんネット」を見れば分かるし、退職金・企業年金があるのであれば会社に聞けば教えてくれます。肝心なことは、「75歳までは働く」ということ。年金「プラスα」のお金を稼ぐというのは、一定の収入を得るだけでなく、健康と人間関係の面でもプラスの効果があります。

社会的な生き物の人間にとって、働くというのは “社会脳” を維持するうえで一番の脳トレで認知症予防にもなるし、外に出かけるので運動にもなるし、新しい人間関係も築きやすいからです。

2.支出
ポイントは、医療費を最小限にして、人生を楽しむために多くを使えるようにすることです。そして支出を「(1)自分で金額をコントロールできる項目」「(2)あらかじめ金額がほぼ決められている項目」に分類し、「(1)食費・外食費、日用品・衣服費、娯楽費・交際費、光熱費・交通費」を削らないことが大切です。気持ちまでケチンボになり、人生を楽しめません。

その代わり、発想を切り換えて、「(2)各種会費、通信費、保険料、医療費、自動車・ガソリン代」を冷静に見直して不要だと判断すれば、思い切って無くしてしまいます。その筆頭が生命保険や医療保険などの保険料、次に自動車・ガソリン代です。

そして75歳以降、年金以外の収入が無くなるのであれば、尚更のこと、統計上70代半ばから急増する医療費を使う必要がないように、今から病気の予防に注力することが重要です。そうすれば年金の範囲内で十分やっていけます。

このように収入と支出、資産と負債を大まかに掴めば、普通にやっていればお金の面で破綻することは無いということが分かり、安心できます。あとは残りの「健康」「人間関係」の問題に集中して、取組んでいくことです。

次回は「健康」について。

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