■平成から「次の時代」を見る(5)

ビジネスパーソンの人生設計が、大きく変わろうとしています。

その背景には、2つの要因があります。


以上2つの要因から、 「75歳になるまで働かないと、社会も、個人も、立ち行かない」ことが見えてきます。そのため、65歳になったらリタイア生活に入るという人生設計は、完全に過去のものになろうとしているのです。

そうなると、たとえ現在の会社で65歳まで働いたとしても、あと10年間、どこで、どうやって働けばいいのか。私達ミドル世代にとって、目の前の大きな課題です。

16世紀後半から17世紀にかけて、荒波の時代を52年間生き抜いたウィリアム・シェイクスピアが、「人生は不安定な航海だ!」という言葉を残しています。

そしてミドル世代が、令和という荒波の時代を、40代・50代で迎えます。私達は、これから始まる、或いはもう始まっている、人生後半をどのように再設計し、『人生航路』後半をどう舵取りしていけばいいのでしょうか。

その解決策は、荒波を航海していける『戦略』を持つことです。そのためには、羅針盤となる「時代観」「人生観」「仕事観」の3つを掴む必要があるのですが、そのヒントとなる事例があります。

それは、平成最後の年に、トヨタ自動車の豊田章男社長が、年頭の訓示で、役員・幹部を含め、本社社員に向かって呼びかけた言葉です。


日本を代表する会社の社長が、“転職” を前提にした思考法を提示した。これは、これから始まる、『人材の流動化』という方針を宣言したものだと思います。

かつて、団塊世代は1学年当たり300万人弱、40代後半になった団塊ジュニア世代は200万人いました。ところが、今の新社会人は100万人しかいません。毎年入ってくる新社会人の減少が積み重なり、働き手人口の総数がどんどん減っています。

この「働き手人口の減少」により、2030年には実に800万人の働き手が不足すると予測されています。そのため国は、働き方改革で「一人当たりの生産性向上」を求めます。分かりやすく言えば、「一人で1.5人分の働きをしてくれ」ということです。

それでも、働き手不足の問題は解消されません。「生産性向上」+『人材の流動化』 が必要です。この両輪が回って初めて、日本の競争力が回復するのです。

というのも、平成の30年の間に、「IT化・グローバル化」という世界の潮流から大きく立ち遅れ、日本が巻き返すには、これからの成長分野と言われる、IT・教育・ヘルスケア・介護・農業などに、人材を集中的に投入する必要があるからです。

そのためには、成熟してしまった各業界から、新たなステージ(次世代自動車産業)への脱皮を図る自動車業界からも、絶対数が多く、様々な経験を積んだ “ミドル層” を成長分野に移動させなければならない。

そこで、日本一、多くの従業員を抱えるトヨタグループの総帥が、日本の株式会社を代表して、口火を切ったのです。

そして、自動車業界の最新のキーワードは「CASE」(ケース)。このCASEを巡って、世界中の自動車メーカーだけでなく、グーグル、アップルや百度(バイドゥ)などの巨大IT企業も参戦し、覇権争いが本格化しています。


スマホを使って電気自動車を呼び出し、音声で指示すれば目的地に連れて行ってくれる「未来のクルマ」。10年以内に出現する可能性が見えています。

自動車は所有ではなく、共有するものに。アメリカのウーバーや中国の滴滴出行(ディディチューシン)など、世界のシェアリングサービスは既に10兆円規模です。

平成元年(1989)時価総額で世界8位だったトヨタ自動車も、今では、世界で35位。そして最大のライバルは、時価総額世界2位のグーグルです。アンドロイドでの車載OSを含め、自動運転車全般の開発を加速させています。

そこで、次世代自動車産業時代の生き残りをかけて、提携した相手が、孫正義CEO&創業者が率いるソフトバンクです。

ーー次回にーー

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